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満月の夜に
時計の針が深夜2時を指した。
ふくはそっとベッドを抜け出し、しなやかに床に下り立つと前足だけをベッドにかけてそっと呼びかける。
「武蔵、起きて。
今日はお月さまが真ん丸の日だよ!」
眠そうに武蔵の左右違う色の目が細く開かれ、暗闇で目だけを光らせているふくを捉える。
「あぁ、わかった」
武蔵は一緒に寝ているおっかちゃんをチラリとみると、大きな欠伸をひとつした。
「武蔵、他の皆はどうするの?」
「ほっとけ。
どうせ、行かねぇだろ」
ふくは頷くと、武蔵と共に並んで目を閉じる。
そして精神を集中させて頭の中に、猫神様を思い浮かべる。
全身の神経が頭に集まってしまったのではないかと思うほどの、強い集中力。
そして、目を開けると・・・・・。
ふくと武蔵は、社殿の前にいた。
ここは奈良時代に創建された今戸神社。
猫を祀る神社である。
都内に住む猫たちは、満月の夜にこの神社に集まっては集会を開いていた。
社殿の前に現れたふくと武蔵に、声をかける猫がいた。
「よう、30分も前にご到着とは相変わらずだな」
見るとそこには、白と黒の毛色をした金さんがいた。
「金さんっ!」
ふくは、金さんに飛びつく。
「やめろって。
蚤がうつってもしらねぇぞ」
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