満月の夜に

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背後から武蔵の声がする。 「そうだぞ、ふく。 お前に蚤がうつったら、俺たちにもうつる。 そしたら、おっかちゃんがまた大変だ・・・・・」 「うん・・・・わかってるよ・・・・」 武蔵と金さんは兄弟だ。 白黒の金さんに対して、武蔵はグレーと黒の虎柄である。 ちなみにふくは今宵の夜のような、闇色だった。 武蔵も金さんも、おっかちゃんの家のベランダで生まれた。 紆余曲折あって、武蔵は家で飼われることに、金さんは外で母猫と共に育った。 とは言え、金さんと母猫はおっかちゃんの家の敷地を縄張りとしており、しっかり家を守っている。 ふくは、生まれてすぐに放り出されてひとりでいたところを、金さんが見つけた。 金さんはふくを咥え、おっかちゃんをベランダの窓から呼んだ。 小さな子猫を咥えた金さんに驚くおっかちゃんの掌に、ふくを託したのだった。 「今日はどのくらい集まるんだ?」 武蔵が金さんに聞く。 「ざっと・・・・、70ってとこか・・・・・。 まったく、てめぇらの事だってのに、最近の猫たちはよっ」 金さんがどこか面白くなさそうに、顔を歪める。 ただでさえ悪い目つきが、更に悪くなり、ふくはこっそり笑った。 「そういや・・・・・・」 金さんが言った。     
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