百万年たっても君を忘れられない

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「また、会えるかな」 「ええ、きっと」  彼女はそういって、春の花がひらくような微笑みを見せた。その笑みを見ると、なぜだが私も気が落ち着き、また会えるような気がしてきた。  ゆっくりと月が近付いてくる。彼女と過ごせる時間はもうあまり無いのだろう。星々が涙を流すように瞬いた。  先ほどまでの、何もかもを覆い尽くす夜闇は消え去り、月の銀の光が辺り一面に満ちた。  彼女の足元の花も、丘の周りに立つ木々も、そして月を見上げる私たちも全てが月によって輝いていた。  彼女はほうっと一つ息を吐いて、やるせないような、悲しげな笑みを私に向けてきた。私は彼女共にいたくて、なにも出来ない自分がどうにも価値のない鼠のようなものに思えた。  彼女と並ぶ丘も全てが銀の光に覆い尽くされ、彼女の白い着物も、黒の髪も、雪の肌も、全てが銀色に染まったように見え、幻想的な景色だった。 「どうすれば、会えるかな?」 「百万年、また私が月から来れるまで待って下さい」  百万年。彼女は永遠とも思える時間を待てと言った。その紅い唇から、私を切り裂く残酷な言葉がでたのだ。だが、あの美しい月が私に姿を見せるのを百万回数えると思えば、そう悪くもないように思えた。  彼女の桜の枝のように華奢な身体が、まるで月の光と同化するかのようにゆっくりと消えていく。  私は彼女が月に引かれるのをなにも出来ず、丘に座り彼女と見つめあった。彼女は不安げに眉を曲げ、震える声でたずねた。 「本当に百万年待って下さいますか?」  言葉のために息を吐くのももどかしく、つまるようにして答えた。迷いはなかった。 「ああ、ここで君を百万年待とう」
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