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「ゆっ、誘拐!? そんなっ、私はっ」
慌てる世莉に、彼はニコリと笑う。
「えぇ、貴女を見れば分かります。誘拐などする人種ではないと。ですからこうして穏便に済ませようと、警察に訴えることをしておりません」
笑っているのだが、本心ではないのが見え見えだ。
「ほら、千代ちゃん。こちらのお姉さんにもご迷惑ですよ。一緒に帰りま」
「世莉姉ちゃんと一緒じゃないと、帰らんばい!」
ギュッと世莉の手を掴み、キッと見上げる千代に世莉もコクリと喉を鳴らした。
「こんな小さな子が逃げ出すなんて余程のことです。簡単に引き渡すなんて出来ません! 警察には事情を聞いて今から届けようかと」
「連絡したのですか?」
一瞬で下がる温度に、世莉はビクッと身体を震わせながらも「……いいえ」と答えた。
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