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「那智? かなり面倒なことになったんだけど」
開口一番、そんな神威の言葉に世莉は心の中で『那智さん、ごめんなさい』と謝った。
「うーん、それはもう警察の管轄ではあるんだけど……」
母親が出てくれば、子供はすぐさま返されるだろうと神威と同じ意見に、世莉も納得だった。
「だからってこのまま返すって手はないだろう?」
まるで道具のように扱う神威に「そんな言い方っ」と意見しようとしたが、まるで『待て』と言わんばかりに左手で制され、言葉を飲み込んだ。
「こいつ連れて潜入ってのはどうだ?」
「え?」と驚く世莉と同じリアクションをしたのだろう、スマホから「えぇ!?」と那智の大きな声が聞こえてきて、神威は嫌そうに顔を歪めた。
「他に方法ねぇだろ?」
それは、そうもしれない。こんな小さな子供また泥棒みたいな真似はさせたくもない。
「あー、分かった分かった。すぐに来いよ?」
そう言って、神威は通話を切った。
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