第十三章 ここに君がいた 三

10/11
49人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
 部屋には布団が用意されていた。俺は、新悟に連絡を取ろうとしたが、電波が届かなかった。布団を敷いて寝転ぶと、そのまま朝まで眠ってしまった。  翌日、目覚めると、松下が身支度していたので、朝食を作り、弁当も作った。俺がコーヒーを飲んでいると、松下が弁当を見ていた。 「凄く重い……」 「エビ焼きそばと、サラダ、スープを入れました」  何が重いのだろう。やはり、具沢山のスープがいけなかっただろうか。 「置いていってもいいです」 「持ってゆくよ。市来君、仕事、頑張ってね」  仕事を頑張るのは、松下の方であろう。俺は玄関まで松下を送ると、二度寝してしまった。そして、再び起きると、あちこちから着信が残っていた。 「興梠さん、どうしました?」  俺はベランダに出ると、飛んでいる飛行機を見た。 『行方不明者と、時期を確認して、被害者を割り出したよ』  その人数は、十二人であった。佐渡と島田は、最初の一人からは、かなり間を於いて二人目を襲っていた。でも、最近になってペースを速め、一回の開催で行方不明者が数人にまで増えていた。  もうすぐ、次の試合になっているので、チーム編成などを早めた方がいいという。  俺は、相葉と練った攻略コースを図師に送り、検証して貰っていた。すると、バカという回答が来ていた。 『図師君が、相葉君も市来も、かなりバカで疲れると言っているよ。まず、人間の行くルートではないそうだ』  でも、図師から最上階に到達可能とも回答があった。メンバーも検証して貰うと、甲斐から回答があり、殺人鬼が襲うのは、桜本の可能性が高いとあった。では、桜本を外そうかと言うと、ベストメンバーでもあるという。 『甲斐君の予測は、殺人鬼が桜本に反撃にあい、次に格闘的に弱そうな市来を狙うといっている』 「まあ、それでいいです」  これで、メンバーも決まったので、説得してゆくしかない。 「興梠さん、新悟を見ていませんか?こちらに来ていないのですよ」 『東郷君の所にいるみたいだよ……殺人の話が続いているようだよ』  東郷は、自分のチームに殺人鬼がいると知って、かなりショックを受けていた。新悟は、メンバーを変えて、ゲームに参戦続行して欲しいと頼んでいる最中であった。 「新悟、俺には何も言わないのですよ」 『まあ、市来君、いつの間にか相葉君の相棒に納まっていたからね……』
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!