第十九章 エスカレーション 四

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「相葉さん、東郷さん、部屋に避難してください」  俺は窓から、犯人を取り押さえているので、確保して欲しいと叫んでおいた。  そして、警察が入ってきて佐渡を取り押さえると、再び高笑いが聞こえてきた。 「皆、一緒に死ねばいい!」  屋上で爆発音が響いていた。 「逃げるぞ!」  俺達は、窓から飛び降りていたが、他のメンバーが来ない。すると広井と玉川が、怪我をした警官を抱えて、外に飛び出してきた。ついでに、気絶させた佐渡も、広井は担いでいた。 「自供してほしいからね」  一息ついていると、今度は本館が爆発していた。本館には、西片と桜本がいたはずだ。 「西片さん!」 「何?」  西片は、後ろに立っていて、どこから連れて来たのか、図師を抱えていた。 「桜本さん!」 「叫ばなくても聞こえている」  時任の姿を探すと、警察官を口説いていた。 「皆、無事ですね……」  爆破され、崩れてゆく廃墟を少し眺めてしまった。今のところ、渓流側に瓦礫が落ちているが、ここに崩れて来ないとは言えない。 「避難してください!」  橋を壊されると、車で帰れなくなってしまう。俺達は、乗ってきた車に飛び乗ると、走り出そうとした。しかし、急発進した先に立ち塞ぐ人がいて、慌ててブレーキを踏んだ。 「富岡!」  富岡は、道路に両手を広げて立ち塞がり、別の道を示していた。しっかり見えているが、死んでいる富岡らしい。暫くすると、本館が崩れ落ちてゆき、橋を押し潰した。 「富岡、ありがとう」  富岡は、にっこり笑うと、上空へと消えるように成仏していった。  見つけると、皆、あっさりと成仏してゆく。変な説得よりも、相葉と西片、東郷までもが引退すると聞き、終焉を悟ったのかもしれない・ 「これで、終なのかな」  そうみたいだと、時任が高原に確認していた。しかし、橋が無くなってしまい帰れない。  でも、死保は警察に関われないので、富岡の示した細道を進んでいると、枝に塞がれて前が見えない程になっていた。でも、かろうじて遺った轍を辿ってゆくと、パイパスの橋に続いていた。 「帰れる!」  どこで帰還命令が出るのか分からないが、とりあえず橘保険事務所に帰っておこう。  橘保険事務所に戻ると、俺はすぐに帰還命令になってしまった。 「又、俺ですか……」  新悟に会っておきたかったが、もう赤の点滅が出ていた。仕方がないので、外に出ると近所の家を三回まわって戻った。
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