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盛り塩をご存知だろうか?
飲食店舗等の入口で見た経験は多いはず。
ちいさな容器に入れた塩を円錐上に盛り上げて、さりげなく置いてある。
それは縁起かつぎであり、厄除けの意味があるらしい。
一般人にとっては、その程度の意味合いであり、巷でときおり見る風景に過ぎないのだが。
「子供の頃から、実家の玄関先に必ずあったんですよ。ええ、盛り塩。もっとも、そんな名称を知ったのは、ずいぶん後になってからですが」
岡田さんは20代後半の独身男性で会社員だ。
「飲食店? いや、店なんかやってません。昔も今も。父親も平凡な勤め人でしたし。自宅だって何の変哲もない建売住宅で」
岡田さんの両親は玄関先に盛り塩を置くことが日課だった。
一般民家でも盛り塩を置くところはある。
だから、それ自体はそれほど突飛でもなんでもないだろう。
そうして盛り塩にも様々な作法?があると聞くが、岡田家のそれは、ある意味『ぞんざい』であったとか。
安い小皿に、スーパー購入の塩を少量盛って。夕方、玄関先に置く。
そのまま一晩出しておいて、朝には回収。塩はゴミ箱に捨てるのだ。
専用の器具を使用して円錐状に形を整えたりしない。塩を厳選するなど論外。
だが。ぞんざいに見えても一日も欠かさない。
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