この家には盛り塩が欠かせない…

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 雨の日も雪の日も。たとえ台風の最中でも。  そう、熱心とか習慣といった域を通りこし執拗と思えるほど。 「何歳頃だったか。他の家ではそんなこと、していないでしょ。だから親に聞いてみたんです。どうして、こんなことをするのかと? そうしたら」  答えたのが父親か母親か。記憶が定かではないが。真顔で、こう答えたそうだ。 『これはね。やらなくちゃいけないんだ。 そのうち、〇〇(岡田さんの名前だ)にも分かる。やめたらダメだ。ダメなんだ・・・』 「妙な言い方でしょ? たんに縁起かつぎなら相手は子供。神様が守ってくれるとか、イイことがあるとか。言い方は色々あるでしょうに。  実際、盛り塩って運気を呼び込むために、やっているところが大部分だと思うんですが」  その両親が、半年ほど前に事故で二人とも亡くなった。  葬儀。各方面への連絡。相続の手続き。エトセトラ。  悲しみ以上に、岡田さんには疲労困憊する半年間であったようだ。  そして。 「気がついたら、『アレ』が始まっていたんです」  アレ?  一人っ子で両親の家に、社会人になった後も同居していた岡田さんであった。  両親の死後は、たった一人で一戸建てに住むことになったわけだが。 「葬儀がすんで三カ月ほど経った頃。夜中に尿意を覚えて、二階の自室から夜中に階下へ降りてきた。そうしたら」
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加