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しばらく進むと、そこだけ光が差し込む広場にたどり着いた。
「少し、休もう。」つぶやきながら、僕は木陰に座り込む。
お腹が空いていた僕は、城から持ってきていたパンを頬張った。
もうだいぶ森の奥まで来ているはずだ。
いまだに、獣の気配はない。
出会えるだろうか?
そんな心配をしていると、森の空気が一変した。
そっと振り向くと、大きなとても大きな顔がすぐもう目の前に迫っていた。
「王の狼!?」心の中で僕は、叫んでいた。
僕は怖いはずなのに、歓喜の方が優っていた。
やっと会えた。緑の王が何よりも大切にしてきたもの。
すごい迫力に、身動きができずにいると、
突然、狼が話しかけてきた。
「お前は、王の息子か?」
そう言いながら、狼は僕の正面にまわり込む。
僕は、狼の質問に頷いて答えた。
さすが王が大切にしてきた狼だ。
大きさは、普通の狼の何倍もあった。
2メートルどころではない。
3メートルあるのではないだろうか?
母の言っていた、綺麗な銀色の毛並みは、健在だった。
「ここに何をしにきた?」狼の質問は、続いていた。
僕は、その王の狼の質問に、うまく答えることができない。
先ほどから、あまりの迫力に怖気付いてしまっていたためだ。
その情けない僕の様子を見て、王の狼はどう思っているのだろうか?
せっかくのチャンスなのに…。
すると、驚くことに王の狼は、僕を大きな尻尾に包み込むようにして寝始めたのだ。
なかなか答えない僕を待つことにしたのだろうか?
いや、絶対にそんなことはないとわかっている。
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