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「変人同士、お似合いだな」
男子生徒が吐き捨てた言葉と共に嫌な笑みを浮かべてこちらを見ていた。昼食後、二人で過ごしていた瑠璃と奏は、
「お似合いですって、瑠璃さん」
「気にするとこ、そこじゃないと思う」
二人だけで会話をしたのが気に入らなかったのか、男子生徒は「気持ち悪ぃ」とだけ言って通り過ぎて行った。廊下の床に動くその影を、瑠璃は心の中を覗くような気持ちで見ていた。
「慣れないでくださいね」
「え?」
瑠璃が顔を上げると、奏の瞳は存外に真剣な色を帯びていた。
「ああいう事を言われるのは、よくあるのかも知れませんが……一人で抱え込まないでくださいね」
「僕の心配をしてる?」
「ええ。……先輩に対して失礼でしたか?」
瑠璃は首を振った。あんな風に言われて真っ先に人の心配が出来る奏は凄い。それと同時に、出来ない自分はやっぱり正反対だと瑠璃は思った。
「あんな奴はどうでもいいけど、僕も奏くんの心配をしたい。でも、これは奏くんに合わせて言ってるだけかもなんだけど……」
「はい」と奏は瑠璃の考えが纏まるのを待っていてくれる。
「これじゃあ、どっちが先輩か分からないな」
同じ学校の制服を着ていても、年が一つ違えば差は生まれる。昼休みに少し会うだけでも貴重な時間だった。
「先輩と後輩であっても、すきなひとの事は真っ先に考えたいし、私が居る事を思い出して欲しいです」
「今、奏くんがキラキラして見える。いや、いつもだけど」
「瑠璃さんもいつもキラキラしてますよ。一番に目が行きます」
瑠璃は戯れのその言葉ですら眩しすぎて視線を落とした。自分の影の中にキラキラしたものを探したけれど何も見えなかった。
「――差があっても対等で居たい」それでも顔を上げて目を合わせる。「対等で居て。奏くん」
「はい」
柔らかな笑みが返って来て瑠璃は安堵の息を吐いた。そうなってから緊張していた事に初めて気付いたのは、奏の隣に立てるひとになりたいという想いが芽生えてたからだろう。正反対でも差があっても、奏が見ていてくれるのならば自分もそれに応えたい。向き合いたい。そう思うと瑠璃はこんな自分も悪くないと前向きな気持ちになれた。
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