1章 遭遇

10/41
前へ
/179ページ
次へ
「あの三つ眼さん、どうしてそんなおっかないものを……」 「人間と知られない方が色々と都合が良さそうですよ」 「つまり、妖見習いということだな、瑠璃」 自己紹介をしたところ、嬉しそうに名前を読んでくれる天月くんに、心の中がほっこりとした。 子狐の姿から、今は少年の姿へと変化しており、彼は銀髪とアメジストのような瞳が印象的な少年の姿をしていた。外見は七歳くらいの子どもなのに、理知的な瞳がそれよりももっと年上に見せている。意思の強そうな目と、子ども特有の柔らかそうな頬。可愛らしいと言われる外見をしているのに、どこか毅然とした立ち振る舞いはまるで一国の主のようだ。 「そら、被って見せろ」 「う、うん」 そっと生成りの面を被りながら、髪をポニーテールにまとめた。 なんだかよくわからない悪寒が襲ってきたような気がしたけれど、気の所為と信じたい! 「似合うじゃないか」 「妖らしくなりましたね。ちなみに、その面ですが、顔を隠さなくても身に付けているだけで効果はありますので」 この洋館は、妖しかいないというのに、その中で人間である私が働いても良いのだろうか。 「貴女には現世について教えて頂くつもりです。人間の世界のことは人間の方が詳しいでしょうから」 また、読まれた!!サトリという妖怪の持つ能力に感心していると、三つ眼さんは面白そうに笑った。 「心を読まれても怖がらない人間は、やはり良いですね。悪用されるのではないかとか不安になるのが普通なのに。初めから不思議でした」 「だって、貴女からは敵意を感じないし……きっと悪いことにはならない気がするので」 きっと悪用はしないと思うのだ。それより、三つ眼さん、何か笑ってる? 「おお、珍しい。あの三つ眼が笑うとは」 「失礼しました。少々驚いたものですから。そのようなお言葉をもらえるとは」 「ん?」 なんだか嬉しそうにも見える。 「それでは、瑠璃さん。貴女はとりあえずこの服に着替えてください」 「ん?和風メイド?」 和服にエプロンとカチューシャという組み合わせは、ちぐはぐながらもどこかマッチしていて。和服に着替えるのは少し慣れていなかったけれど、どうにか着付けた。お面を付けると本当に妖怪になったような気がする。 それにしてもこの制服。 「か、可愛い」 「侍女の制服は、雪洞(ぼんぼり)という者が考案したのだ」
/179ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加