1章 遭遇

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「後は頼みます。イチジク」 「承知しました」 え。いきなり二人きりにされるの。それにしても三つ眼さんが何やら面白そうに笑ったのは何故だろう。 「先程、お聞きしましたがお身体が弱いらしいですね」 ん? 「あまり力仕事は出来ないと伺いましたが、体力的に無理がありそうでしたら、すぐに仰ってくださいね?」 少し先を歩く狐村壱改めイチジクさんは、物腰の良さそうな柔らかな雰囲気で微笑みを向けてくれた。大学で見かけていた彼は誰とも口を聞かないクールなイメージだったのに、こちらが素なのだろうか? それにしても、三つ眼さん、上手く説明しておくと仰っていたけど、まさかの病弱設定とは。 「はい。気をつけます。私は何を任されるのでしょう?」 「やる気十分ですね、こるりさん。とりあえずこの館の中を一通りご案内してからになりますが。色々と複雑なので迷いやすいと思いますから、後程、見取り図をお渡ししますね」 「ありがとうございます!早く覚えますね」 それにしてもこの人、何歳なんだろう。気安く呼ぶのははばかられる。なんとなくだけど、すごく年上な気がするなあ。 「基本的に使用人の部屋は離れを使うことになります。台所がありますので、そちらで食事を作ることも出来ますよ」 とりあえず向かう先は離れで、向かうにつれて廊下の作りは古びていった。途中に高そうや壺が置いてあったりして、少しだけドキドキしてしまった。 割ったらやばそうなやつじゃないですか。何故、こんなところに置いておくのか。蔵にしまおうよ。蔵に。 とりあえずお屋敷の見取り地図をもらい、一通り案内してもらったのだけれど、とりあえず部屋数がとてつもなく多いということは分かった。 後は、まあ、これから覚えていくから……。まあ、うん。 「貴女も、あのサトリさんから縁があるとかないとかお聞きしたでしょう?俺も含めてこの屋敷に滞在する者は皆、訳ありなのです」 「はあ……確かにそんな気も……」 「しばらくは俺がお教えしますので、なるべく傍にいてもらえると助かります」 「あ、はい。むしろ迷いそうなので傍にいてもらえるとこちらが助かるというか……」 ふっと笑う気配。この人、本当に大学の時のイメージと違うなあ。 「とりあえず休憩室で今後の方針を決めていきましょう」 どうも今の体勢はイレギュラーらしい。
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