1章 遭遇

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「噂を調べるために現世に紛れ込むのですが」 「なるほど」 それなら面を外してしまえば紛れられる! 「狐の妖が出没しておりまして、その妖は神出鬼没でおまけに人を喰うんです。俺たちはその妖の討伐と情報収集を任されています。まあ、調査の方は芳しくないので主に討伐任務になってしまっていますが。出没する場所は何故か学校が多いので、基本は屋敷勤務の俺も忍び込んでいたという訳です」 なるほど。それで人間に化けて混じっていたんだ。あそこまで目立っていると潜入にならないような気もするけれど。 人間の誘拐事件。惨殺事件。ドクンドクンと心臓が嫌な音を立てているのが自分でも分かる。 ぎゅっと握りしめた手のひらに爪がくい込んだ。 「今のところ分かっているのは、出没する狐の妖は本体ではなく分身であるということ。どこから湧いているのかは不明です」 「分身………それって消えたりしますか?」 「そうですね。ある程度人を喰った後、空気に溶けるように消えていくらしいです」 なるほど。 「ところで、こるりさんは現世については詳しいですか?」 「まあ、そこそこですよ」 だってずっと暮らして来た訳だし。 でも妖より人間の方が苦手。相容れないというか。
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