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夢と現があやふやだったけれど、ここまで助けに来てくれたのはイチジクさんだと確信している。きっと、心のどこかで。
ぎゅっと目を瞑った直後、どさっと身体が投げ出されて。
「ひゃっ!」
「っ……く」
身を投げ出された私たち。
とっさに地面が柔らかいことに気付くと、イチジクさんと目が合った。しかも私が見下ろす形で。
「ご、ごめんなさい!重いですよね!?」
ぱっと退こうとした私に微笑みが返された。頬をそっと撫でられて、どきりと鼓動が鳴る。
思わず動けなくなった私たちに、さぞ愉快と言わんばかりに手を叩く観客が居た。
「お疲れ様ー。まさか、お前が契約を結んでいたとは思わなかったよ。俺の造った迷宮をクリアする奴が現れるとはね」
「祐也」
戻ってきたのは、先程の場所。祐也とよく似た別人の男。真っ暗な部屋、相変わらず繋がれたまま、不敵な笑みを浮かべていた。
「お前……!」
イチジクさんから殺気が迸った。
「なに?そっちの黒い奴、俺のこと知ってるの?いや、祐也かな?俺は祐也じゃないよ。祐也じゃなくて、悠也。ゆうなり」
「名乗られても嬉しくありません。一時間したら忘れます。確実に」
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