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「はは。つれないなあ。瑠璃の殺気もなくなっちゃったし。黒狐。お前、瑠璃に何してくれちゃってんの?人を呪い殺さんばかりの怨みに満ちた目が最高にそそられたのに」
「……」
私は弱くなってしまったのだろうか。私自身は何も変わらないはずなのに、何故か身体が震えてしまう。捨て身の攻撃が出来る気がしない。
「お前の怨みってそんなもんだったの?」
ぐっと唇を噛み締めると微かに血の味がする。
私は一体どうしてしまったの?死にたくない、なんて。
「瑠璃さん、耳を貸してはいけません。貴女は間違っていない」
間違っていない?何が、間違っていないのだろうか。全てはこの瞬間のためにあったのに。
「ふーん。瑠璃もそんな顔出来たんだ。そんな、弱々しい顔。普通の女みたいな顔」
普通?私、そんなに弱々しい顔をしているの?
何を怖いと感じたの?
私は本来、ここに一人で来るはずだったのに。一人で立つよりも誰かが傍に居てくれることが怖い。何で怖いなんて感じたの?
「普通の何が悪いのですか?何も悪いことはないはずです」
庇ってくれるイチジクさん。もし、私に巻き込まれて、彼が……。
「ふーん、なるほどね」
何かに気付いた悠也は、口角を上げて嗜虐的に笑み崩れたと思ったら、ふいに指を上げて、イチジクさんに指を突き付ける。
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