6章 復讐者

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私があの男の迷宮に囚われていた時に、救ってくれた時、同時に私自身をも救ってくれたような気がする。あの時、心の奥底まで触れて、大切なものを私に戻してくれたような。 恐怖が、煩わしいはずの恐怖を久しぶりに感じた私は、今まで目を逸らしていたものに気が付いた。 私は、大切な何かを作ることを避けていたんだ。三つ眼さんは、全部知っていてくれて、その上で私の傍に居てくれた存在。 「イチジクさん、触れても良いですか?」 「え?はい……?構いませんよ」 「本当に?」 「ええ。貴女に触れられるのは嬉しいから」 触れたい。私から。 「イチジクさん……」 可愛らしい黒い狐の姿をしたイチジクさんを目の前まで持ち上げる。 目がくりくりとしていて、本当に可愛い。 そのふわふわとした口元に私はそっと口付けをした。 「ありがとう」 もっと伝えたいことがあったはずなのに、結局はこんなシンプルな言葉になってしまった。 どさっと何かがのしかかってくる。頬に触れるのは節くれだった男性の指先。 「あ……」 いつの間にか、私のよく知るイチジクさんに戻っている。 人の姿をしたイチジクさんの目は雄弁で。目は口程にものを言うとはよく言ったものだ。     
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