6章 復讐者

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* 「あっはははははははは!!!それで断ったのか。なるほど、それでイチジクは灰になっていたのか!!これは傑作だ!」 「……」 デジャヴを感じる。 私が目覚めた後、イチジクさんに連れられて、屋敷の皆さんに顔を合わせに行ったところで、イチジクさんは呆然としていた。 私のせいではあるけれど、突然のプロポーズにどうして良いか分からなくなって、恥ずかしさも相まって、「ごめんなさい」と言ってしまった。 それもこれも私にはいっぱいいっぱいだったのだけれど、何故か執務室はお通夜ムードだったから、それにも驚いた。 ちょうどしていたらしい。私の話。 「瑠璃。お前はもう普通の人間ではいられない」と沈痛な面持ちで語りかけてきた天月様に、私はあっけらかんと言ったのだ。 「全て覚悟の上でしたし、何も問題ないです」 三つ眼さん以外、目が点になっていた。 「お前、それで良いのか?」と乱暴な方の夾竹桃さんに心配されたのも記憶に新しい。 こっくりさんは一人ではやってはいけない。呼び出すことは出来ても、呼び出した人間は行方不明になったり死んだりと怖い噂はいくつかある。 真実は、こっくりさんという存在を一時的にその人間の身体に宿すことによる負荷による発狂や死亡である。 私が耐えきれたのは、私が強い霊力の持ち主だったということと、妖力を纏うというあの妖の面だ。 膨大な妖力が宿った瞬間に、生成りの面を付けていたことと、その時持っていた強い怨み。その全てが作用して、私は。 現代で珍しく人間を止めて魔道に堕ちた。怨みは、人を鬼に変えるとはよく言ったものだ。 そして、一度鬼に堕ちたらもう私は人間には戻れない。一度変化した身体は運命を受けきれてしまっているから。 天月様が「すまない」と言ったのも、私に一瞬でも宿ることによって、死ぬことはなくともどんな結果になるか分からなかったからだと言う。 あまりにも落ち込んでいた天月様に私の方が耐えられなくて、皆がいったん部屋から退出した後に話を変えようと試みて、慌てた挙句に。 うっかりと話してしまったイチジクさんとの間にあったあの件の顛末。
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