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「すまん。そんな場合ではないのに、大笑いをしてしまった……」
「天月様……」
気に病むことではないのに。
私は死ぬことすら怖くなかったのに。ただ、私はこの怨みをずっと抱えていかなければならないことの方が辛い。
「それよりも私は、あの男を殺してやりたいです」
「殺したらお前は立てるか?」
「え?」
「お前は復讐を果たしたら立てなくなると思ったんだ。僕も、おそらくイチジクも」
「そんなことは」
ないとは言えなかった。私の根っこの部分に住み着いた怨みは根深い。それ以外のことを考えずに生きてきたのに、私は何も結果を残せなかった。
「あれはまだ生かしている。雪洞の持つ力で今は眠らせて、夢を見させている。それが幸せかどうかは知らないが。瑠璃、お前は復讐以外の何かを見つけろ。見つけた上でそれでも殺したければ殺すと良い。それまでは僕があいつを管理してやる」
それは私に対する温情だった。私がどうなるか私にも分からなかったのに、天月様もイチジクさんも私を思ってくれていた。
襲撃に行って私はただ迷惑をかけただけだった。
「私は、何も出来なかった……」
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