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「何も出来なかった訳ではない。僕が力を行使出来たのは瑠璃のおかげだ。僕の力は制限付きだからな。それに、何も出来なかった訳ではない。お前が行動したことに意味があると僕は思う。復讐が良いか悪いかはこの際置いておくとして」
「イチジクさんにありがとうって言おうと思います」
「イチジクか……。今はあいつは、事件の跡地を巡る予定だった。例の降霊術の行われた場所をいくつか巡って」
「ありがとうございます!」
私は最後まで聞く前に飛び出していく。天月様がぽつりと呟いたのを背後で聞いた。
「あいつらも若いな」
たぶん貴方が言う台詞ではないと思います。
飛び出した私と部屋に入室しようとしていた雪洞さんと目が合った。
今回初めて知ったけれど、雪洞さんは狸の妖だった。夢を見させる能力、つまりは化かす妖怪なのだろう。
「こるり。貴女前は面をしていたじゃない?勿体無いからそのままでいなさいよ?表情が見えやすくなって良い感じよ」
「はい。もう仮面を被るのは止めるべきですよね。ただ」
唐突に取り出したのは鬼面だ。
「顔を隠すのは辞めますが、鬼の面は身に付けることにしようと思います。その方が妖っぽいでしょう?」
「貴女、そんな顔で笑っていたのね。大丈夫。貴女の勇ましい姿はしっかりと覚えているから。病弱とか聞いていたけれど、私が会った鬼の中でも鬼らしい方だと思うわ。元は人間だったって聞いて驚いているくらい」
頭を撫でられる。
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