1章 遭遇

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最低。二人して二度と私の前に顔を見せるな。 こんな人前で怒鳴りつけてやろうと息を吸った瞬間だった。 「南さん、遅れてすみません」 その爽やかな明るい声が割って入ったのは。 イチジクさん、と口を開きかけて慌てて閉じる。狐耳も尻尾も見当たらない、完全に人間モードのイチジクさんだったからだ。 もしかして、私だと気付いて助けに来てくれた? 「彼女と待ち合わせをしておりますので、お二人の間でお話があるのなら、俺たちはこれで失礼します」 肩を引き寄せられて、気が付けばイチジクさんに隠されるようにして、二人から距離を取ることが出来た。 「な……!おい、瑠璃、その男は何だよ?!」 「お姉ちゃん最低。二股?!」 「貴方たちがそれを言うのか」 斜めから見るイチジクさんの目に宿るのは怜悧で鋭い軽蔑の色。心から人を嫌悪する眼差しで、私の義妹と元彼を一瞥すると、「はっ……」と鼻で笑った。 きっとイチジクさんの本性は、優しい青年という訳ではない。 この場から逃げたい私を気遣ってくれているのは確かだった。背後で何やら騒ぎ立てている彼らを無視して、私をエスコートするようにして連れ出してくれている。     
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