1章 遭遇

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私は眉を顰めた。 「こっくりさんって一昔前に流行りましたね。そう言えば。俺はあまり詳しくはないですが」 「私が幼い頃も流行っていたみたいです」 「南さんは、こっくりさんをやってみたことあります?」 そんなのしたら狐の霊に憑かれそうで怖くてやった覚えがない。クラスの女の子たちが悲鳴を上げながら楽しそうに盛り上がっていたのを思い出して、少し苦々しくなった。 「あれ、怖い顔してどうしました?」 「いえ、何でも。……こっくりさんは、やったことないですね。あれ一人じゃ出来ないじゃないですか」 ぼっちつらい。 「そうですか。俺も昔は一人だったので、こっくりさんはやったことないです」 絶対に嘘だ。ついでに妖がこっくりさんをやるってシュールすぎる。 そしてこの後ちゃっかり連絡先を尋ねられてしまった。携帯電話の番号を教えるのも癪で、滅多に使わないパソコンメールの番号を教えた。それでも満足していたみたいだったけれど。 イチジクさんちゃらいのかな……。というか、もう男が信用出来ない。 帰ったら、さり気なく教育係を変えてもらえるようにしよう。うん。     
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