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「初めまして。こるりと申します」
とりあえず挨拶をするけれど、視線が痛い。何を考えているか分からないから余計に。
「雪洞さん、三階の部屋はどこまで終わりました?」
「えーっと、確か窓は終わりましたわ。部屋は全く終わってないです」
人差し指を口元に当てて考え込む仕草はあざとい。女性から見たらあざといけれど、男性から見たらたまらないんだろうなあ。一つ一つの仕草が可愛らしく洗練されてる。
私はこの状況から離脱することにした。
「では、私は水を変えてきますね。あと箒ももう一本」
「ありがとうございます。では。先に行ってます」
戦線離脱。こちらを舐めるように眺められているのが気まずい。
「私もご一緒しますわ」
え。付いてくるの。
「あちゃー」と額に手を当てているイチジクさんは、目で「頑張ってください」と言っているようで。
え?本当に何なの?
それにしてもニコニコしていた彼女が、だんだん歩くごとに無言になっていって、しかも真顔になっていくのが怖い。
あからさまなタイプってこういうことかー。つまりは女性と仲良く出来ない女性。
「この忙しい時期に新人とか、貴女空気が読めないのね。イチジクさんが優しいからってその気にならないでよね」
早速高圧的な口調来ました。ご期待にお答えくださり、ありがとうございます。
「まあ、確かにイチジクさんは優しいですけど……」
私はあまりお近付きになりたくない。
「言っておくけど、あの方物腰は柔らかいけど、完全に脈なしよ。媚び売っても無駄なんだから」
「確かに、そんな気がしますが」
タラシ男は恋に本気にならないって王道だ。
「病弱だったからって、それを理由にイチジクさんに迷惑かけたら承知しないんだから」
「雪洞さんはイチジクさんのことが好きなんですか?」
「はあ?なんで私があんな狐野郎を好きにならなきゃいけないのよ?!」
んん?あれ?私に辛く当たる理由が思い当たらなくなったぞ?何故?
「てっきり、私の教育係になったことが気に食わないのかと……」
嫉妬の類か思っていた。
「この屋敷に私以外の女が居ることが気に食わないのよ。メイドが紅一点っていうのが美味しいのに!」
り、理不尽!!
「それを言うならサトリの……」
三つ眼さんとか、と言う前にぐっと接近された。
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