1章 遭遇

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「手始めに紅茶の入れ方とコーヒーの入れ方を教えてください」 「そんなの朝飯前だわ。むしろそんなことも出来ないの?」 「………」 口調はキツイが、口元が緩んでいる。顔と口調が一致してないよ、雪洞さん。 「まあ、この私が教えてあげるんだから、真面目にしなさいよね?」 「はい」 雪洞さん、可愛いかも。目を逸らしているけれど、教えてくれるのは確からしいし。 「あ、とりあえず取りに行かなきゃですね」 「私が行くんだからバケツの水も二つくらい持っていくわよ」 「二つも持てるんです?!」 すごい。力持ち! 「これくらい朝飯前よ?私を誰だと思っているの?」 「えっと、雪洞さん……」 なんだかとても嬉しそうだからそのまま放置していたら。 「えっと、お二人とも、これは一体どういう状況ですか?」 唖然とした表情に迎えられた。 「私の本気を見せるつもりがこんなことになってしまいました」 てへ、と彼女は舌を見せる。こういう仕草が様になっているんだけど、本性見ちゃうと少し面白い。 雪洞さんの両手にバケツ。そしてなんと頭の上にもバケツ。 大道芸人か!!というツッコミはしないで置く。思っていたよりも面白そうな人だ。     
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