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「あそこに浮遊している瘴気ですが、明日にはなくなるはずですので、貴女を別の道からお送り致します」
「無視か」
仲の良さそうな主従だ。少し癒されたのは言うまでもない。
それでも家に帰るのは……。今、家にいるだろう妹を思い出し、私は服の裾をぎゅっと握り締めた。
「と思いましたが、貴女には何やら事情がおありの様子。家に帰りたくないというのなら、丁度良い符号です。貴女のことを天月様は随分とお気に召したご様子。どうやら、見知らぬご自分に対し、気遣ってくれたことがよほど嬉しかったようで」
「おい、もうお前、それ止めろって言っただろう?!」
顔を盛大に紅潮させながら、ぽかぽかと小さな前足で彼女の足元にパンチを繰り出していた天月。
どうやら図星?
私の事情すらお見通しな彼女はうっすらと優しい笑みを浮かべた。
ふこの妖は全てお見通しなのだ。
「サトリです」
「はい?」
「私はサトリという妖怪なのです。全てを見通す能力を持ったある意味全知の存在」
「それ自分で言って恥ずかしくないのか、サトリという種族は、ってぎゃあっ」
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