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尻尾を掴み上げられた天月は三つ眼を下から睨みつけている。案の定、怖くはなくて、彼女は微笑ましそうに笑みを浮かべると、私に向き合い、人差し指でしーっと唇に指を当てた。
「貴女の縁は興味深いですね。真実を知りたいなら、私の手をお取りください」
真実。彼女は何を見て、何を教えようとしているのだろう。
私はゆっくりと手を伸ばした。
脳内に黒いもやが、まだわだかまっている気がした。
連れられた小狐の屋敷、そこで働くことになった。
唐突すぎるのは、分かっているが私にも都合が良かった。
「貴女は人間ですが、ここで過ごすためには身分を偽らねばなりません」
「三つ眼さん、人間は妖怪になれないと思います!」
サトリの三つ眼さんに手渡されたのはお面だった。不思議な気配を漂わせた鬼の面。特徴的な角をしていた。そんなに角は長くないような?
「これは生成りの面です。生成りとは鬼の成りかけを言います。ある女が鬼になる際に命を狩られまして、死んでいたにも関わらず生気に満ちた表情をしていたので、そのまま型どりました面がこちらの品です」
何そのいわくつき!!
「ちなみに、この面を被ることによって、妖怪特有の妖気を纏うことが出来ます。この面がもはや呪具のようなものなので」
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