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急激な科学技術の発展が寧ろ文明の崩壊を招いた。この荒廃した世界の中で出来ることは、残された資源を集めて、それを工夫して利用していくことだ。
初めここに来たときは何も無かった。この建物も住める状態ではなかった。初めは壁を補強して、床を綺麗にして、割れていた窓も直した。力のいる仕事や繊細な仕事、知識のいる仕事。それぞれに出来る仕事は違っていて、だからこそみんな互いを尊敬して自分に出来る仕事を全うしていた。そして誰もが絶えず仕事をしていた。
より良い暮らしのため。それがいつからか、すり替わってしまった。この限られた共同体の中で、自分を不要な人間だと思われたくない。そう言った思いが焦燥へと変わる者もいた。誰もが絶えず仕事をしていた。それはまるで病気だった。少しでも仕事をしていなければ誰かの視線が気になった。だがそれもあと少しで終わる。この生活が整えば、自然とみんな落ち着きを取り戻すだろう。そう、甘く見ていた。
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