真夜中の落し物

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「しかし馬鹿な盗人ですね。逃げ切れる訳がないのに」続いてもう1人が「主任は柔道5段に空手4段ですからね。太刀打ち出来ませんよ」とよいしょしているように聞こえる。 「普段は優しいけどな?がっはっは」と主任は大笑いだ。 えー!武道家なのか?もしかして警備会社勤務とか。その割には簡単に入れちゃったけどな。 そうすると主任が「そうだ、この前貰った警視総監賞を見せてやるよ。腕時計と勲章だ」と椅子を引く音がした。 警視総監だって?じゃあ警察か? 俺は、腕時計と勲章を入れた袋を、まじまじと見つめた。 「あれ?おかしいな?確か棚の上にあるはずなんだが」と主任が探し回っている様子だ。 やばいぞ。見つかれば間違いなく刑務所行きだ! 何でよりによって警察なんだよ! もっと戸締りを厳重にしろってんだよ! 俺は唾を飲み込んで、息を殺した。 「主任、押入れじゃないんすか?」と部下が言った。 余計なこと言うなよ! 「もしかして泥棒が入ってたりして。はっは」ともう1人が、冗談っぽく笑った。 さりげなく当てるんじゃないよ! 俺はとにかく、早くここから逃げ出したかった。
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