第五十七段階 貴子の恋愛オプション

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第五十七段階 貴子の恋愛オプション

二階建てのこじんまりしたアパート。二階の一番階段に近い所の部屋から杏が出かけるような格好をして階段をおりてきた所だった。 「杏さん! こんにちは、あの話を聞かせて欲しいの」突然、階段に向かってどこからか走ってきた貴子に杏は、驚いていた。 「あんた! どっから出てきたの? ってかさ、あんた……いつからいたの?」 「まあ、ずっといたんだけど……」 杏は長く息を吐き出した。体調が悪いと言って仕事を休んでいた貴子。安藤主任にレイプ未遂事件の関係者である販売員の家の住所を聞いてきていた。澤口と関係があるようだとも聞かされ、あるひとつの仮定が貴子の頭に浮かんできていた。 ―――私の思い込みかもしれない。澤口さんと関係がある女性が澤口さんのために嘘を言っているんじゃないかっていうのは考え過ぎかもしれない。 杏の家には、午前中に一度訪れていた。その時は杏に「話す事はない」と門前払いされていた。 「信じられない。朝からいたわけ? もう、4時だけど」 朝、門前払いされてから、ずっと外で色々と考えていたが、自分に出来る事はこれしか方法がないと思い、もう一度杏の家のドアをノックしたが居留守を使われていた。 「ええ、まあ。そうなんですけど。電気のメーターは早く動いてるしエアコンも動いてたから部屋にいるんだろうなって思って」 貴子は寒さを和らげる為に足踏みをしながら鼻水を思い切りすすった。 「あんた、何が聞きたいわけ?」あきれたように貴子を見ている杏。 「はい。白井部長に襲われたなんて何で嘘つくのかを聞きたくて」
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