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「かんたんに言うと、その人に完敗って感じ? ははっ……白井部長、心配しないで。私、明日ちゃんと真実を話すから」
まっすぐな瞳を向けてくる杏に白井は、頷いた。
「……ああ」
―――今は、あの娘を信じよう。これ以上、文句を言うのもやめよう。藤谷さんが無事だった。彼女が無事なら、それでいい。
「白井部長、その人がさーあ、酒が足りないって言ってたんで今、買いに行くところで。あの……待っててくれます? なんか食べるものも買って来ますから。もちろん、私の奢り。……その人もう少し休ませてあげたほうがいいかもだし……」
杏は玄関先で靴を履き、ぼーと立っている安藤の事を見上げた。
「ちょっと! あんたもボッとしてないで買い出し付き合ってよ」
「は? なんで俺まで?」
「気が利かない男ねー」
杏は、顎で奥にいる白井と貴子を示した。
「少しくらい機転きかせなさいよ、出世出来ないわよ!」
「あーそうか、なるほど」安藤は、何かを察したのか頷いて杏と外へ出た。
「あの、部長、買い出しに行ってきます! えっと、なるべくゆっくりと」
余計な安藤の一言を残してドアがしまった。
外から杏の高い声が聞こえる。
「余計な事言わないでよね! 一言多いのよ」
「そんな事を君に言われたくないね。だいたい……」安藤と杏が言い争う声が徐々に遠くなって行った。
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