第五十八段階 白井の恋愛オプション②

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「かんたんに言うと、その人に完敗って感じ? ははっ……白井部長、心配しないで。私、明日ちゃんと真実を話すから」 まっすぐな瞳を向けてくる杏に白井は、頷いた。 「……ああ」 ―――今は、あの娘を信じよう。これ以上、文句を言うのもやめよう。藤谷さんが無事だった。彼女が無事なら、それでいい。 「白井部長、その人がさーあ、酒が足りないって言ってたんで今、買いに行くところで。あの……待っててくれます? なんか食べるものも買って来ますから。もちろん、私の奢り。……その人もう少し休ませてあげたほうがいいかもだし……」 杏は玄関先で靴を履き、ぼーと立っている安藤の事を見上げた。 「ちょっと! あんたもボッとしてないで買い出し付き合ってよ」 「は? なんで俺まで?」 「気が利かない男ねー」 杏は、顎で奥にいる白井と貴子を示した。 「少しくらい機転きかせなさいよ、出世出来ないわよ!」 「あーそうか、なるほど」安藤は、何かを察したのか頷いて杏と外へ出た。 「あの、部長、買い出しに行ってきます! えっと、なるべくゆっくりと」 余計な安藤の一言を残してドアがしまった。 外から杏の高い声が聞こえる。 「余計な事言わないでよね! 一言多いのよ」 「そんな事を君に言われたくないね。だいたい……」安藤と杏が言い争う声が徐々に遠くなって行った。     
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