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第五十九段階 澤口の恋愛オプション
「親父、どういうことだよ!」
澤口は、親であるHOKUBUデパートの澤口部長の部屋を訪れていた。
「どうもこうも、俺の手には負えない」
AUSSYの福袋は、昨日の新年開店一日目、13時を少し回ったところで完売した。ところが、その段階ですでにもう70ブランドが福袋を完売しており、どう転んでもAUSSYがリニューアルオープン時の65店舗に加わることは難しかった。
―――ありえない話だ。白井がいない今、なぜ親父の一存でAUSSYの一店舗くらい加えられないんだ?
「親父なら出来るだろ? たかが一店舗加えるくらい。いつもだって俺の言うことなら何でも聞いてくれたじゃんか」
澤口は、自分の営業成績が一番にならないと気にいらなかった。入社してからあのてこの手を使って一番を守り続けてきた。
―――それなのに、いまさらHOKUBUデパートに店が出せないなんてトンでもない! 俺の営業成績はどうなるんだ。
澤口部長は、デスクの上に両手の手を置きゆっくりと指をくみあわせた。息子をじっと眺めて
「うちの従業員の何人かから、お前にセクハラをうけたというものが出ているぞ」と静かに伝える。
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