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「はあ? 誰だよ。そんな女は。わかった、亜矢か? あいつは頭がおかしいんだよ。とっくに別れたのに俺のせいで新しい男から金を取られただのって、いちゃもんつけてくるんだからな」
ソファから立ち上がって、デスクへ詰め寄る澤口。
「まさか、本気にしてねえよな?」
親の顔を覗き込む澤口。その視線がまっすぐにぶつかった。
「お前の尻拭いを、今まで飽きるほどしてきた」澤口部長は、冷たい口調で言い始める。
「親父!」
「もうたくさんだ! 今朝、この前の白井部長のレイプ未遂事件の被害者がここに来て全てを話していったんだぞ! お前は私がここまで築いた地位も不意にさせたいのか!」
澤口部長の厳しい口調が部屋に響いていた。
―――まさか。杏が? 杏が俺を裏切っただと。そんな馬鹿な……。
澤口の顔色は、だんだんと悪くなっていった。
「出て行ってくれ。もう、二度とお前の顔は見たくない」
「親父! 聞いてくれって。事情があるんだって」
澤口に背を向けて窓辺に立つ澤口部長。
「なあ、怒ってるのか? たいした事じゃない。そうだろ? 親父が黙ってたら済むことなんだ」
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