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「……なるべく穏便に訴えたりしないように白井部長に頼むつもりだ。それが……親馬鹿の私が単細胞な息子のために出来る最後の事だ。わかったら……出て行ってくれ」
背中を向けたまま窓から外を眺めている澤口部長。
―――そんな……。
うなだれている澤口は、拳を握り締めた。
―――どいつもこいつも、ここにきてどうして掌を返すように俺に刃向かってくるんだ! 俺がいったい何をしたんだ。哲司に亜矢に杏。どいつもこいつも許せない。
怒りに震えながらHOKUBUデパートを出た澤口の前にひょっこり現れた人物がいた。
杏だった。
「お前! なんで裏切った!」
杏の両肩を掴んで、ぶんぶんと前後にゆする澤口。
「いたい! いたいよ! 隆弘」
痛がる杏から澤口は乱暴に手を離した。
「何しに来た。これ以上、俺に何の用があんだよ!」
「会いに来たの」
「なにを言ってるんだよ。お前。俺を裏切ったくせに!」吐き捨てるようにいう澤口。
「裏切ってないよ。今でも隆弘が好きだもん。だから、こうやって待ってたの」
杏を不思議な生き物でも見るように眺める澤口。
「好きだって? なら、なんで俺を苦しめる」
「ごめん。隆弘。でも、こうするしかなかったの。私、隆弘が好きだから、愛してるから……隆弘はまともに頑張ってやってける人だって思ってる。応援するから!」
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