第五十九段階 澤口の恋愛オプション

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「まともだの、応援だのって何だよ。お前……俺がお前みたいな若いだけの女を相手にするとでも?」 「それもわかってる。別れたがってたのも哲司って人から聞いたんだから」 ―――哲司に聞いた? なるほど、こいつにも哲司は最後に吹き込んでから消えたって訳か。 澤口は苦笑いして杏を見た。―――哲司から聞いたのに、まだ俺を引きずってんのか。馬鹿な女。 「馬鹿な女だって思ってもいい。私もそう思うもん。本当は冷たいし遊び人だし、嘘つきだし」 杏に言われて澤口は、口の端を上げて笑った。 「思ったほど馬鹿じゃないな。お前。ちゃんとわかってるみたいだな。……じゃあ、わかるよな。この後、俺がどう言うか」 澤口の瞳が冷たく光った。 「わかるよ。二度と俺の前に現れるな、か、それに似たような言葉を言うんでしょ?」 大きな杏の瞳が揺れていた。 ―――わかってるなら、わざわざ言わせるな。面倒くさい。 「それでも、好き。隆弘が好き」 ―――こんなに好きだと言われたことは、記憶する限り無かった気がした。ここ一年、遊んだ女はきれいさっぱり哲司になびいていった。過去の自分は、いつも仮面を被っていた。女にもてる為にたくさん嘘をついて、たくさんいい人ぶっていた。裏の顔を知って、なおも杏は俺を好きだと言う。 澤口は、小さな杏を見つめた。     
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