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「馬鹿な女……。お前に嘘をつく必要がないから、つかないし、オブラートにも包まない。俺は……お前をなんとも思ってない。でも……お前がなんと思おうと、それはお前の勝手だ。……俺が干渉する事じゃない」
杏に背中を向けて歩き出した澤口。その澤口の左腕に走ってきてガバッと腕を絡める杏。うざそうに立ち止まって腕を見おろす澤口に笑顔をにっこりと向ける杏。
「じゃあ、こうしてもいいよね? 私の勝手だから」
―――へんな女。勝手にすればいい。親父にまで見放された俺のどこが好きなんだか……。愛とか恋なんか信じない。でも、もしかしたら……もしかしたら……こいつは俺に今まで知らなかった何かを教えてくれるかもしれない。
澤口は、腕に重くぶらさがる杏を気にせずにまっすぐに進んでいった。
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