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「そうじゃなくて、あの尾田さん! 私、尾田さんが」言いかけた花音の言葉にかぶせるように尾田が言葉を発した。
「「好きです」」尾田と花音の発した言葉が全く同じだった。違ったのは、そのあと花音は恥ずかしそうに俯いたが、尾田は「なんて言ったりしてって、付け加えたかったのにハモッっちまったけど……」と言葉を続けた。
「あーー、頭が……」こめかみを押さえる尾田に花音がポケットから錠剤の二つ入ったシートを取り出してテーブルへ置いた。
「頭痛薬です」
テーブルから即座に手を引っ込め俯く花音を眺めた。
―――気が利くんだな。こいつって。課が違うから良く知らなかったけど、案外可愛い子もいたんだな。
「あーー、なんだか俺、失恋したばっかで心が痛いかも」言いながら、横目で花音を窺った。
「ええ! そうなんですか? あの、私がなにか力になれればいいんですけど」
顔を上げた花音。その顔は林檎みたいに真っ赤だった。
―――片思いの辛さは、俺痛いほどわかるからな。こいつが本当に俺の事好きって言うなら、俺も真剣に向き合わないとな。
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