虫とり

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 ニギリも遊具から降りて、公園を出ようとする。 「じゃ、後でな」  シバさんが私に言った。 「あの……ちょ、ちょっと待って!」  私は慌てて言った。  このままではまた言えない。  もう時間が無いのだ、今言わなければ。 「あのさ……」 「どうした? おまえ、昨日からナンかヘンだぞ」  シバさんが訝しげに言った。 「うん……ゴメン……  あのさ、おれ、引っこすことになった」 「え?」  三人が眼を(みは)る。 「お父さんが急に転勤になって、二学期から別の学校に通うんだ」 「ウソッ?」  ニギリが()(とん)(きよう)な声を上げる。 「いつ引っこすんだよ?」 「今週の土曜日……」 「え? 今日、水曜日だぞ」  ニギリが指で日にちを数える。  私は胸が苦しくなり、涙が溢れた。 「ゴメン、昨日話そうと思ったんだけど、言い出せなくて」 「だから、オレたちを虫取に誘ったのか」  私はうなずいた。 「でも、最後にみんなと虫取ができて良かったよ、すっごく楽しかった!」  私はムリに笑おうとした。  みんな黙ってしまった。 「また、戻って来るんだろ?」  私は首を振った。 「わからないんだ。でも、少なくても3年ぐらいは向こうにいることになるって」 「どこに引っこすんだ?」 「北海道……」     
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