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「助けて……誰か助けてくれぇ~~ 」
叫びながら泳いで近くの岩場に辿り着いた。体中傷だらけで顔は真っ青だ。
「何だ……あれは何だ…… 」
岩の上でゼイゼイと息を付いている所を通り掛かった漁業関係者に見つかって捕まった。
近くの漁港へと連れて行かれて事情を訊かれるが丸山は混乱していて言葉にならない。
「ばっ、化け物が……顔が……顔だ…… 」
真っ青な顔で震えながらブツブツと呟く丸山に温かい缶コーヒーを差し出しながら漁業関係者が声を掛ける。
「あんたよく無事だったな」
「無事って? 」
あの化け物の事を知っているのかと丸山が顔を強張らせる。
「あそこは潮の流れが悪い」
「地元の俺たちもあの辺で潜ったりしないぞ、自殺するようなもんだからな」
離岸流などではなく潮が渦を巻いているらしい、一旦渦に巻き込まれると沈んで浮かび上がれなくなってしまうのだ。
「去年も3人死んどる」
「死にそうになったのも4人居たっけ」
「おお、居た居た。足を掴まれたとか何とか言ってたな」
「顔があったとか……溺れて酸欠になって幻でも見たんだろうがな」
漁業関係者の話しを聞いて丸山はガタガタと震え出す。
「ほっ、本当です。本当に顔があって手が伸びてきたんだ」
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