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密漁している不届き者がいないかと漁業関係者は定期的に見回りをしているのだがどういうわけかこの海岸では見た事がない、それを知っているので大学生の頃からちょくちょく来ているというわけだ。
「少し流れが速いから気を付けないとな」
ウエットスーツを着た丸山が海へと入っていく、気を付ける事といえば潮の流れだけだ。離岸流があるらしく流れの速い箇所があるのだ。
午後の3時頃から潜って小一時間経った。サザエやウニが大漁だ。
「サザエとウニはもういいな、アワビかトコブシがもう少し欲しいな」
充分すぎるほど捕ったのだがアワビは少ししか捕れていない、丸山は欲を出した。
もう直ぐ日暮れになる。まだ少し寒い時期なので海が充分暖まった午後から潜り始めたのだ。
「あとアワビ3つ、トコブシなら5つ捕ったら終わりにしよう」
咎める者がいない海、調子に乗った丸山は日が傾くのも構わずに潜っていった。
「んん!? 何だ? 」
4メートルほど潜った先に何か居た。岩と岩の間、砂が溜まっている場所だ。
何が居るのかと丸山は近付いていく、
「ブフッ! ゴバァァガッ~~ 」
口から泡を出しながら慌てて水面へと向かう、顔があった。岩と岩の間に溜まった砂の上、後頭部が埋まるようにして人の顔が仰向けに見えたのだ。
「ひっ、人がっ! 顔がっ……水死体がっ! 」
丸山は慌てて近くの磯場へと上がった。
「死体か? あんな所に? 」
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