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第二話 頭
都内のある企業に勤める丸山さんが教えてくれた話しだ。
25歳になる丸山さんは海遊びが好きで釣りはもちろん潮干狩りや磯場で貝やカメノテなどを獲っては食べていた。趣味と実益を兼ねると周りの人に吹聴していたくらいである。
23歳で入社して今年で3年目、仕事にも慣れて余裕が出てきた丸山は休みを利用して少し遠くの海へと足を伸ばした。
「ここに来るのは大学以来だな」
大学生時代に何度か来た事のある海岸だ。砂浜ではなく、小石がゴロゴロしていて泳ぐには適さないが少し沖へ出ると岩が沢山転がっていて貝やウニが豊富にいるのだ。
「ちょっと冷たいけどこれくらいなら大丈夫だな」
季節は春、水温を確かめると丸山はウエットスーツを着た。
潜って貝やウニを捕るつもりだ。もちろん違法である。殆どの海や川、湖には漁業権がある。許可無しで勝手に捕るのは違法だ。
磯遊びのついでに市場に流通していない貝やカニなどを捕るのも厳密に言えば違法なのだが遊びの範疇だとお目こぼしをしてくれているだけだ。
丸山が捕ろうとしているのはサザエやアワビにウニだ。密漁である。完全に犯罪行為だ。
「この辺りは見回りに来ないんだよなぁ」
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