記憶の、上書き。

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「あんまり仲が良いから・・・物凄く不安になって」  更に締め上げられて、ううっと池山は呻いた。 「だって、池山さん、ものすごく魅力的だし・・・」  このままだと、絞め殺されそうだ。 「わかった、わかったから、腕緩めろ!!」 「あ。すみません」  ぱっと腕を解かれて、池山は前に崩れ落ちた。 「こんの・・・馬鹿力め・・・」  ぜいぜいと肩で息をすると、背後からしょんぼりした謝罪の声がもじもじと聞こえてきた。 「ああもう」  ばしゃん、と水面を打って身を起こし、身体の向きを変えて江口の膝に乗り上げる。 「ほんっと、お前馬鹿だな」  両手で頬をパンと、軽くはたいた。 「はい。馬鹿です」  尻尾も耳も髭もしゅんと垂らした大型犬が目の前にいる。  このしおれぶりが可愛くて仕方ないので、いつ喧嘩しても腹が立ったことはあまりない。 「んで?本間を売ったって、何したんだよ。ん?」  両手をそのままに額を寄せて甘く囁くと、おずおずと腰に手を回される。 「・・・クリスマスイブは、茨城に行くつもりらしいと情報を流しました」 「・・・ああ、それか」  ここのところ、佐古が立石達の部屋を訪れる頻度が下がっていた。  そもそも今年のクリスマスイブは金曜日で、仕事があるから来ないと12月に入ってからわざわざ申し入れがあり、立石と本間はそれをかなり気にしていた。  物心ついた時からアメリカ暮らしだった佐古にとって、クリスマスは特別な日だったはずだ。  それを独りで過ごさせることに不安を感じた本間が、定時退社で茨城の押しかける計画を練っていることは、佐古以外の全員が知っている。  22日の夜から23日の午前中にかけて立石と本間は料理を作り、佐古のマンションへ宅配便で送った。  あとは当日、ワインを持った本間が電車を乗り継いでいくだけだ。 「それで、秘書さんの車があったのか・・・」 「気が付いていたんですか」 「まあ、たまたま1階に下りる用があったからさ。片桐に用があるのかなって思っていたんだけど・・・」  本間を捕まえに来ていたのか。 「はい。送迎だけでもいいから、当たってみるとおっしゃってましたから・・・」 「そうか」  本間が譲らなかったのは、容易に想像が付く。 「で?リークしたお礼なわけ?」 「ええまあ・・・。偶然だったんですが、この部屋を押さえてるって話になって・・・」
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