第一話 テント

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 土砂を蹴りながら中条が怒鳴った。先程、山道で見たゴミと同じだ。建築廃材を不法投棄したのだ。それが土砂崩れとなってお気に入りの場所を3分の1ほど埋めていた。 「この前の大雨か……それでゴミが流れてきたんだな」  2ヶ月前にあった大雨を思い出す。雨で緩んだ斜面の土が建築廃材のゴミの重さに耐えきれなくて土砂崩れを起したのだろう。 「ブルーシートまで混じってやがる」  蹴り上げた跡に青い布切れが見えた。現場でよく使うブルーシートだろう。 「仕方ないなぁ……他に場所なんて無いし、クソッたれが…… 」  中条は愚痴りながら定位置とは反対側にテントを張る事にした。 「2泊しようとか思ってたけど今晩だけだな」  土砂崩れを見ながらテンション駄々下がりで昼食のコンビニ弁当を食べた。  食事を済ませると手早くテントを張り終えて近くを散策する。  沢で遊んだり山菜を採ったりしてあっと言う間に夕方だ。  山菜を入れたインスタントラーメンを作り保冷剤と共に小さなクーラーに入れて持ってきた缶ビールを飲む、溜まらなく幸せだ。  豪勢ではないが贅沢な一時を過ごしてテントに入って横になる。 「やっぱ来て良かったなぁ、缶ビールもう1本あるしもう一泊するかな…… 」  ランタンを点けて横向きになって寝転がっていると後ろがポンポンと鳴った。 「何だ? 」     
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