5人が本棚に入れています
本棚に追加
寝返りを打つように振り返るとテントの布がポンポンと押された。まるで誰かが指で突いているかのようにテントの布がポコッと盛り上がる。
鹿か猪か、何かの野生動物だと思った中条はホイッスルを取り出すと思いっ切り吹いた。
ピィィーーッ! 静かな山に笛の音が響いた。
ポンポンと押すのが止まったのを見て中条は懐中電灯を持って外へと出る。
辺りは既に真っ暗だ。開けている場所なので月明かりが入ってテントの場所は見渡せるが周りの木々は懐中電灯の明かりがないと何もわからないくらいに闇が広がっている。
「逃げたな…… 」
辺りの藪を照らすが何も居ない、鹿などが居れば目に光が反射して直ぐに分かる。
「まぁ九州に熊はいないからな、猪は怖いけど腹減って行き成り襲ってくるような事はないからな」
もう一度辺りを確認してからテントに戻った。
「ちょっと早いけど寝るか」
久し振りの山歩きと仕事の疲れが出たのか中条は眠りに落ちていった。
『アヴヴゥ……オアァァ………… 』
どれくらい眠っていただろう、何か聞こえたような気がして目を覚ます。
『ヴヴゥ……アオァァ……イタ……イタイ…………クル……シ………… 』
声のようなものが聞こえてテントの中で身を固くしていると足音が聞こえてきた。
最初のコメントを投稿しよう!