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ザザッ、ガサッ、テントの周りを何かが歩いている。辺りに生えている雑草が擦れたような音だ。
『アウゥ……イタ……イタイ…………ヴヴゥゥ…… 』
テントがポンポンと突かれた。指先で突いたようにテントの布地がポコッと盛り上がる。誰かが何かを言いながらテントを突っついている。
野生動物じゃない、中条の顔が引き攣っていく、
「だっ、誰だ! 」
懐中電灯を握り締めて大声で叫ぶとテントを突いていたのが止まった。
「俺に何か用か! 用があるならハッキリと言え!! 」
続けて怒鳴るように言う、夜中の山の中だ。辺りに人などいなかったはずだ。夜中にやってくる奴がまともだとは思えない。
「俺に何か用か? 用が無いなら帰ってくれ! 」
何度か呼びかけるが返事は無い、周りを歩いていた気配も消えている。
中条は思い切ってテントを出た。
「何処へいった? 俺に何か用か? 」
懐中電灯を使って辺りを見回るが人はもちろん野生動物も何もいない。
「なっ、何だって言うんだ…… 」
ゾクッとした寒気を感じると中条は逃げるようにしてテントへと入った。
「ラジオでも聞こう」
山の静寂などを楽しんでいるので普段は聞かないラジオをつけた。スマホの電波は届かない場所だ。ラジオは天気を確かめるために持ってきているのだ。
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