第二話 長いがいいか? 短いがいいか? 

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 尾上は自己破産申請の手続きをした。警察が親身に相談に乗ってくれて一からやり直す気になったのだ。  山で死んだ人々の中には自殺ではなくてあの声を出す何者かに殺された人もいるのではないかと思った。長いとは首吊りして首を長くする。短いとは首を切って短くするということだろう、行方不明の捜索で警察が山へ入ったときに頭が外れて転がっているのを度々発見するのは声に釣られて短いとこたえた人なのかも知れない。 「そりゃぁ、怖かったですよ……でもね、怖かったけどあの声が無かったら私は首を吊って死んでいましたよ、あれは山の神様か何かだったんだと思いますよ」  一からやり直して今では妻や子とまた一緒に暮らしている尾上さんが神妙な面持ちで話しの最後に付け加えた。
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