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第二話 長いがいいか? 短いがいいか?
事業に失敗して多額の借金を負ったことのある尾上(おのうえ)さんから聞いた話しだ。
もう10年も前の事になる。尾上は事業に失敗して借金だけが残った。30代後半の尾上にはとても返せる額じゃない、取り立ては執拗に来る。妻とは離婚して子供たちに迷惑が掛からないようにした。
惨めな暮らしが続いて何もかも嫌になった尾上は死んだ方がマシだとある山へと向かった。自殺が多いと噂になっていた山だ。近くの町に住む口の悪い住人たちは首吊り山と呼んでいた。
地元の人も近付かない山だ。近くの町などで行方不明者が出る度に警察が捜索に入っていくつかの遺体を見つける。
木にぶら下がっている者、首吊りの結果か、身体から離れて転がっている頭など必ず複数の遺体が見つかる。そんな山だ。
だが死にたくて死ぬんではなく仕方無く死ぬような自殺希望者にはいつか警察に見つけてもらえるという安心感がある。それで彼方此方から自殺希望者が集まってくるのだ。
ひっそりと死んで土に帰りたいなどという者はやってこない、そんな山である。
行き詰まった尾上も死のうと山へと入った。
「最後くらい贅沢してもいいよな」
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