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なけなしの金で高級酒を2本、背中のリュックに入れている。余り酒の飲めない尾上なら1本でも泥酔するだろう、酒だけでは不安だったので睡眠導入剤も持ってきている。
酔った勢いで首を吊って死のうと思ったのだ。
「あの木がいいな…… 」
山の中腹辺りにある大きな木を見つけて歩いて行く、
「先客のか…… 」
遺体こそ無かったが衣類の切れ端が散乱していた。
「女みたいだな……美人かな……じゃあここにするか」
尾上は木の枝に持ってきたロープを吊して輪を作る。
「じゃあ、飲むか……あんたも飲んでくれ」
ウイスキーの蓋を開けると散乱した衣類の切れ端に少し掛けた後で傍にあった岩に腰掛けて飲み始める。
『長いがいいか? 短いがいいか? 』
少し酔いが回ったところで声が聞こえたような気がした。
「相変わらず酒に弱いなぁ…… 」
幻聴だと苦笑しながらウイスキーを飲んでいく、
『長いがいいか? 短いがいいか? 』
また聞こえた。ウイスキーは瓶の半分も無くなっていない。
「なんかつまみも買ってくればよかった」
自殺するというのに酔いが回って良い気分になってきた。
『長いがいいか? 短いがいいか? 』
ハッキリと聞こえた。
「長いのにしてくれ! 」
酔っ払った尾上が怒鳴るようにしてこたえた。
『長いのか』
声が聞こえて少し間を置いて尾上は首に圧迫感を感じた。
「ががっ! 」
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