第三話 山奥の湯

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第三話 山奥の湯

 山歩きの好きな浅井さんがその温泉を見つけたのは大学生の頃だ。  友人の田舎の山に温泉があると聞いて山歩きがてらに行ってみて一発で気に入った。今では年に数回訪れるようになっていた。  1時間ほど歩いた山奥にある温泉だ。商業用の立派なものではなく旅館などは無い、脱衣所代わりの小屋と身体を流す足場が組んであるだけの大人が6人も入れば満員といった小さな秘湯である。  お湯は源泉掛け流し、そのままだと少し高めの温度なので山の上から配管が伸びていて湧き水で薄めて温度を調整するようになっている。常時湧き水の出ている配管の先から伸びるホースを湯船に入れると湯が薄まり温度が下がる。ホースを外して脇へ退けると湧き水が入らなくなり温度が上がっていくという仕組みだ。  去年の春の事だ。浅井は連休を利用して山の温泉へ小旅行としゃれ込んだ。  友人の田舎である山の村は浅井の住んでいる町から日帰りでも行ける距離だ。普段は朝早くから出掛けて山に登って昼過ぎに温泉を楽しんで山を降りて夜までには家に帰るという日帰り行程だが今回は連休を使って麓の民宿へ泊まってそこから山へ向かってゆっくりと温泉を味わおうという趣向である。     
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