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山を登って温泉へと着いた。脱衣場となっている小屋に入る時にちらっと見ると湯船に人影が見えた。
「珍しいな、先客だ」
大学生の頃から彼此50回以上は来ているが人と会ったのは2回しか無い、今回で3回目だ。
「地元の人か、それとも何処かの物好きか」
自分の事を棚に上げて服を脱ぐとタオルを持って湯へと向かう、湯に浸かっていたのは老人だ。
「こんちには」
挨拶をしてから浅井は桶で湯を汲んで身体を流す。
「地元の方ですか? 」
お爺さんに声を掛けながら湯に入った。
『あぁ…… 』
お爺さんが唸るように返事をした。
「そうですか地元の方ですか、それじゃあ近いから毎日来れますよね、私は○○に住んでて下の○○村の友達に此処を教えて貰ったんですよ」
にこやかに話し掛けるがお爺さんは『うぅ』や『あぁ』としか返事をしない、それどころか湯船から脱衣所の小屋の辺りをじっと見つめて顔も合わそうとしないのだ。
「ふぅ……やっぱりいい湯だなぁ~~ 」
湯に浸かりながら手足を伸ばす。ちらっと見ると爺さんは初めに見た姿から一つも動いていないように思えた。
湯に浸かりながら10分ほど様子を覗うがやはり爺さんはぴくりとも動かない。
「じゃあ、お先に…… 」
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