9人が本棚に入れています
本棚に追加
⇒ミチオ
ミチオの本当の名前を私は知らない。
そりゃ、聞こうと思ったこともある。
だけど、止めた。
だって大事なのはミチオがどんな名前なのかって事より、ミチオがミチオでいることだから。
ミチオに出会ったのはカレって言っても当時、付き合ってた彼ね。
そのカレの住むアパートに行こうとして道に迷っちゃったんだよね。
ああ、私、結構、方向音痴なの。
でも一度、行ったことあるしなんとかなるかなって駅についてもカレに迎えに来てって連絡しなかったんだ。
でも歩いても歩いても着かなかった。カレのアパートに。
おかしいなぁ、確か暇そうな喫茶店があってそこの角曲がったらちっさなアパートがあったんだけどなぁ。
って、グルグルグルグル適当に歩いてたんだけど全然着かなくて、
えっ?
ああ、そうだよね…カレに電話して迎えに来てもらえばいいよね?
でもさ、それじゃ意味がないの。
だってね、私、
カレの浮気現場押さえたくて。
だから、なんとしてでも自分の力でたどり着きたかったの。
何度目かな。
人相の悪いーーーって犬だから犬相?の悪い犬の前を通りかけた時、声を掛けられたの。
「ねぇ、どこに行きたいの?」
って。
「どこって…、えっと…それは…」
「それは?」
「スタートライン!そう、私が今から立つスタートラインに行くのよ。」
これがミチオと私の初めての会話だった。
最初のコメントを投稿しよう!